2019実践研究報告集NO.1822
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1.はじめに1.1ケアラーの⽀援体制の現状ケアラーとは,「⾝体的あるいは精神的な疾患や障害または⾼齢からくる諸問題を抱える家族や親戚,友⼈や隣⼈に対して,同居・別居を問わず,無報酬で介護をする⼈」と定義され⽂1),広く家族介護者を指す⽤語である。15歳以上で「ふだん介護をしている⼈」は698万1.3 みちくさ亭の概要みちくさ亭は,ケアラーを⽀える居場所・情報交換の場を⽬指して,運営代表者の布川を中⼼に,2013年10⽉より千葉県柏市郊外の空き家にて運営されている。2015年12⽉移⾏は,NPO法⼈ケアラーネットみちくさとして活動しており,飲⾷店として週4⽇間カフェを営む。最寄りの逆井駅から12km徒歩17分に位置す15歳以上で「ふだん介護をしている⼈」は698万7千⼈に上り,4割は男性,また半数は59歳以下,39歳以下も1割を占める⽂2)。介護・看護が理由の離職は年間約10万⼈⽂3),⼦育てと介護を同時に担うダブルケアも約25万⼈に上ると推計される⽂4)。⼼理的・社会的に孤⽴し易く経済的にも逼迫し,ケアラー⾃⾝の⽣活や⼈⽣が⼤きな影響を受けている現状があるが,そのケアラー⽀援は,平成27最寄りの逆井駅から1.2km,徒歩17分に位置するみちくさ亭は,布川が実⺟から相続した家であり,7年間の介護を経験した場所でもある。農業集落と旧開発住宅地の境⽬の市街化調整区域に⽴地しており,⽬の前には豊かな⽥園⾵景が広がる(図1-1)。近隣は全体的に⾼齢化が進んでおり,農業集落の藤⼼や旧開発住宅地の⼀部は⾼齢化が4割に迫り,介護を担うケアラーが多く住んでいることが予測される地域である。この地で,ケアラーが抱える苦悩をケアすることを⽬的に,①週に4⽇のカフェ営業による居場所事業,②介護予防事業として介護に関する知識・情報提供と健康づくり,③講演・研修等啓発事業を進める(図1-2)。運営は毎⽉委託費を⽀給する7名(以下,スタッフ)と,年に1回⽀給の11名,計18名の有償ボランティアを中⼼に担われておりうち7名有償ボランティアを中⼼に担われており,うち7名はカフェで傾聴も担う。但しその謝礼や家賃は,柏市の補助⾦に依るところが⼤きい。利⽤者数は年々増加しており,2017年度は延2,428⼈,地域包括⽀援センター等公的機関との連携も取れつつあった。主に1km圏外から⾞でアクセスする利⽤者が中⼼であり,徒歩圏の利⽤は少なかった注1)。つまり,近隣に住むケアラーのサポートをはじめとして,近隣への波及効果は不⼗分であろう事が予測された。1.4活動の⽬的と内容そこでみちくさ亭の近隣地域浸透・連携をはかるべく,次の実践・検証活動を計画,遂⾏した(図1-3)。図1-1みちくさ亭の周辺環境年の介護保険法改正や認知症施策推進総合戦略(以下,新オレンジプラン)でようやく位置付けられたばかりである。またその内容も,⾃治体の任意事業の⼀つに規定されているのみであり,ケアラーの健康や仕事を保証する仕組み作りは⼀部の⾃治体の取り組みに⽌まるのが現状である。そこで本実践活動は,ケアラーの居場所・⾝近な相談の場の創出が相談の場の創出が,これからの住⽣活向上の鍵これからの住⽣活向上の鍵であであるという認識のもと,その⽀援拠点づくりを進めるケアラーズカフェ&オレンジカフェみちくさ亭(以下,みちくさ亭)の地域浸透・連携をはかるものである。これを通して,ケアラーサポートの定着に向けた課題解明を⽬指している。1.2 ケアラーズカフェの位置付け⽇本で最初の例は,NPO法⼈介護者サポートネットワークセンター・アラジンによって2012年4⽉,杉並区阿佐ヶ⾕で開設された⽂5)。ここは,ケアラーの孤⽴防⽌を⽬指し,「介護者の会」のネットワーク化をはかってきた団体であるが,会の多くが⽉1回の開催であり,ケアラーが⾏きたい時に⾏ける場こそ必要との思いで開設された。⼀般のカフェとの違いは⼀般のカフェとの違いは,「介護者「介護者の気持ちの気持ちに寄に寄り添って話を聴けるスタッフやボランティアがいる」ことであり,①安⼼できる居場所,②話を聞いてもらえる,③地域情報(制度以外のサービスや居場所情報など)がある,④仲間ができる,⑤⾷事や飲み物がある,⑥学習の機会の提供がある,を機能として挙げている。みちくさ亭も,アラジンをモデルとしており,現在ケアラーズカフェは全国に約20ヶ所あるという。⼀⽅,同時期に⽇本で紹介され,急速に普及するものに認知症カフェがある。平成24年(2012)「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」にて認知症の⼈やその家族等に対する⽀援として紹介されたのが始まりであり,今や全国に2,253件⾒られる⽂6)。⾃由に開設することができ,認知症の⼈と家族の⼈と家族,地域の⼈地域の⼈,専⾨職が集う場である専⾨職が集う場であることこと以外は設置基準や内容にルールがない。家族介護者であるケアラー⽀援を掲げる市⺠による場という点は共通しているが、ケアラーズカフェは⽀援対象を認知症等と特化していないこと,また認知症カフェは公的に位置付けられており,開設・運営に係る公的補助のあるケースが多い点が、違いとして挙げられる。STEP1(2章)認知度向上を⽬指した近隣住⺠参加型のみちくさ亭リノベーションの実施である。相続した空き家をほぼそのまま活⽤していたみちくさ亭の空間計画注2),活⽤⽅法の⾒直しであり,ケアラーのほか,⼩学⽣や⾼齢者等の住⺠参加型で進めることで,みちくさ亭やケアラー問題を知ってもらう機会をつくる。

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