2018実践研究報告集NO.1724
3/10

晴らしく、パーマカルチャーキャンプなどのイベントも行われた。ゲストハウスがようやく軌道の乗り始めた2018年、Nさんが生業を変えざるえない状況が生まれ、「Miyama Little Valley Guest House」は残念ながら現在、休業状態である。ケース2マガリプロジェクト空き家活用の仕組みを積極的に移住者、UIターン組、それと関係して専門的に空き家活用を生業として取り組むケース岐阜県中津川市に「一般社団法人ヒガシミノ団地」という不思議な名前の、空き家再生活動グループがある。リーダーのMS氏は、岐阜県出身で、建物の施工や設計に従事し、震災後石巻市で復興コミュニティづくりに取り組む。中津川市にUターンした後、石巻での経験を生かし、組織を立ち上げ空き家活用社会実験プロジェクト「マガリ」に取り組む。その「マガリ」とは、空き家は街や商店街の余白であり、その余白を活用し次につなげていくために、空間の一部をマガリ(間借りしてオフィスとして活用)する。そしてそのために住民さん(借り手)が来るまでに修復作業をすると言う「実験的事業・活用」の仕組みを考え実践した。図1-1にその仕組みを示す。プロジェクトの実施例見学調査したのは、2017年6月に他の調査で中津川市に行った時に偶然、訪れた旧中山道落合宿にある。「清蔵」という江戸期の建物を改修し、調査時には改修中であったが、8月に再訪したときには改修が終わり、通り側はカフェが入居しオープンしていた。ちなみに組織の生業としての収入は、入居者(時間・日・月貸しも含め)全賃料―建物所有者へ支払うマガリ代=収入である。一棟だけではその収入が足りないので、プロジェクトを複数成立させ、賃収入を増やす。「清藏」見学の後、中津川市の旧中津宿での次のプロジェクトの建物に案内された。旧中山道中津宿の本町での空き家活用プロジェクトであり、この見学会には、中津川市の委託で調査に中津川に来訪している東工大真野研究室のメンバーも参加している。空き家再生活用に類似する「マガリ」という手法で取り組むグループに同じ中津川市坂下地区を中心に行っている「ボロンコビリ」という活動がある。「ボロンコビリ」の手法はもう少し単純で、「ヒガシミノ団地」のような理念はなく、田舎暮らしの移住希望者に空き家を提供する仲介としての「マガリ」である。田舎暮らしの移住希望者にとって、農山村に空き家物件を見つけだし、大家と交渉し、入居できるように建物改修する大家から物件を「マガリ」し、一連の作業を行い、都会の田舎暮らし希望者に貸すのである。田舎暮らし希望者にとって、空き家に家財道具が残っているとその片付けを思っただけで借りる(買う)意欲が失せるそうである。「ボロンコビリ」は大工工事的な技術は持っていないので、家財道具の片付けの場合だけの場合もあるようである。ここでの生業としてのビジネスは入居者賃料―建物所有者へ支払うマガリ代=収入である。話を聞くと、かなりのプロジェクトを実施しており、トータルするとある程度の収入が確保されるようであるが、家賃回収も楽ではない面もあるようである。調査に訪れた時、中津川市坂下の古民家の物件では、「ボロンコビリ」の夫婦と幼児が住み込みながら建物の掃除・改修をおこなっていた。夏で、季節的には恵まれていたが、なかなかガッツのあるチームであり、聞くと海外放浪生活が長く、その過程で身に着けた生業力のようなもののようだ。ケース3都市部古民家改修再利用プロジェクト都市部で歴史的建物、空きビル等を商業施設として再活用するケース岐阜市金華伊奈波地区は、信長城下の時代から町割と空襲にあっていない背景から、明治期の町家など多くの歴史的建物を今も残る地区である。その地区に2017年、古民家改修再利用の事例が3件あった。KURA HOLICZERO江戸期の奥行の深い町家が建築家の設計で改修され、大手スポーツ用品店のショップ「KURA HOLIC ZERO」としてオープンした事例この建物は建築家の設計で改修されたのちも、しばらく借り手が見つからない状態であったが、大手スポーツ用品店が新たなショップ展開として、活用した。奥行きの深い町家がショップとしておもしろい空間を作り上げていて魅力的であった。「カフェ水の音」と「ギャラリー伊奈波」その近くで小水路をはさむ2軒の町家が改修され、それぞれカフェとギャラリー(「カフェ水の音」と「ギャラリー伊奈波」)としてオープンした。「カフェ水の音」と「ギャラリー伊奈波」は、それぞれコンパクトな建物である質の高い内部空間を作りあげている。しかし借家としての活用で、経営的になりたつのかどうか、心配な面もあるようである。写真1‐2清蔵図1-1マガリプロジェクトの仕組み

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る