2018実践研究報告集NO.1724
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増え続ける空き家の現状に対し、その価値と魅力をどう発見し、マイナスイメージからプラス評価に変え、新たな住まい方を生み出し、住みたくなる状態を限られた条件のなかでどう実現するか、事例を通してその具体的な空間の姿や評価点をさぐった実践型研究である。そのなかで地方都市の農山村では、空き家活用の事例分析から移住場所や住宅の物件探しとリフォームまで程度の差はあれ「自力」ということが重要なファクターになっていることが判った。このことは地域での暮らしと住宅文化を再構築していく大きな力になると考える。地⽅都市における空き家活⽤⼿法の実践岐⾩市⽴⼥⼦短期⼤学名誉教授/柳⽥良造柳⽥桃⼦地方都市における空き家活用手法の3つの実践実践1.地域での空き家活用の事例調査今、地域では空き家活用がブームである。特に農山村地域では、建物を新築するよりも、空き家の利活用・再生が目立つ。空き家活用手法の実践的研究活動として、まず地域(筆者の暮らす岐阜県)における空き家活用の現状の把握を行った。そのねらいとは、地域での実践のなかから、傾向をさぐり、まだ未着手の空き家活用の領域をさぐることである。岐阜県内の空き家の状況は、1993(平成5)年に約6万2千戸(空き家率:9.2%)が、2013 (平成25)年には約13万3千戸(空き家率:15.2%)と、20年間で2 倍を超える増加となり、空き家率も全国平均の13.5%を上回り、1998(平成10)年を境に岐阜県は全国平均を上回りだす。地域への移住の促進を含め空き家の利活用サポートの行政サイドの取り組みでは、岐阜県内では山県市、郡上市、中津川市などが活発である。3つのケースでの空き家活用の地域の状況の事例調査ケース1Miyama Little Valley Guest House農村部で行政サイドによる移住とからめての空き家バンクの取り組み山県市では「ぎふやまがたで送る田舎暮らし」のポータルサイトをもち、「空き家物件一覧」のサイト等がある。その中に「山県暮らし体験」見学会の参加者募集のサイトがあり、参加写真1‐1 Miyama Little Valley Guest House実践研究報告No.1724 申込を行い、2017年9月に山県市に赴いた。見学会では地域の生業紹介で、製材業の見学と手作りの川のテラスで話を聞く体験をしたのち、空き家改修の実践例「Miyama Little Valley Guest House」を見学調査した。これは、2013年に山県市美山で地域おこし協力隊として農家レストランの立ち上げのサポートを行ったNさんが美山の川の美しさを気に入り定住を決意、その後山県市などのサポートもあり築70年の旅館兼雑貨屋の空き家を1年かけて友人達にも手伝ってもらい、廃校になった小学校の床板や建具なども再活用して改修し、2016年1月にゲストハウスとしてオープンした。武儀川支流の円原川の畔にたつゲストハウスは川の景観が

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