2018実践研究報告集NO.1723
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可能性が見いだせた。「住民の新たな参加」が一足飛びには進まないことは当初より予想されたが, 他の公園や場所でのマルシェ開催という水平展開もすでに始まっていること, 今後も身近な場所でマルシェが開催されていくこと, また, 新たな担い手の確保には不可欠な「楽しさ」がこの活動から発信されていることから, 人々の参加の意識が次第に醸成されていくことが期待される。5. 実践活動を通じて得られた学び5.1 コミュニティプラットフォームの可能性と課題個々の市民活動団体の活動の活性化には, 地域のなかで信頼を得ていくことが不可欠であるが, それには地道な努力と年月が必要である。しかしコミュニティプラットフォームという形態は, 多様な主体の複合体であることで, 私益ではなく公益的な活動として容易に認知され, プラットフォームも, メンバー団体も, 行政や民間企業, さらに町内会や住民からの「信頼」を得て, 多様な活動機会を得やすくなることがわかった。公園, 駅前広場, 市民館広場の利用許可を得られたのも, プラットフォームという存在があればこそ可能となった。本実践活動では, 以前からの地域活動を通じて信頼できる個人や団体を特定できていたため, そうした人達に参加をまずは呼び掛けたが, マルシェの回を重ねるごとに, プラットフォームに入りたい人や団体から, 多数の問い合わせを受けた。また反対に, 既得権を守ろうと, 新たな人の参加を拒むケースも発生した。プラットフォームというコミュニティ基盤が有効であると認知されればされるほど, どのような組織運営形態をとっていくことが良いのか, 今後の大きな課題である。5.2 公園という公共空間今回活動場所として, 誰もがアクセスできる屋外の公共空間である公園や駅前を選んだのは, プラットフォームメンバーの活動の可視化を最大の目的としたからで, それはある程度の効果を得た。それに加え, 公園では人々の滞留時間が長く, 訪れる住民と参加メンバーとの自然発生的な, 何気ない会話が数多く生まれ, そこから住民の抱えるさまざまな課題やニーズもまた, 共有され, 可視化できることがわかった。特に, 今回あまり効果が得られなかった「住民の新たな担い手としての活動への参加」という部分では, 活動に関心がまったくないのではなく, 関心があっても参加の方法がわからない, また見知らぬ4.実践活動から得られた成果と評価本活動を通じて, 当初6団体だったプラットフォームへの参加団体数は26に増え, 新たなつながりや連携, マルシェ以外の場での活動や事業の機会等が数多く提供された。この動きはまた, 多くの情報提供の機会を得て発信された(表4-1)。この新たに起こった, または得られた機会(①~㊱)によって, 「地域コミュニティ活動の活性化」の課題とされている「担い手」「活動場所」「資金」「情報発信」「つながり」の不足がどれほど補われたかを, 本活動の効果として検証した(表4-2)(例:病院という「活動場所」, 新たな「情報発信機会」, 合同参加による「つながり」を得られたと評価)。その結果, 地域活動の活性化を促すさまざまな効果が得られたことが確認できた。特に「情報発信」「新たな繋がりや連携, 協働事業」の機会が数多く提供された。異なるテーマやセクター間で連携することで, 個々の主体個別の活動からは得られなかった, 新たな視点や新規の課題解決手法により, これまで以上に多様で包摂的な地域活動が展開される表4-1活動から得られた成果一覧表4-2地域活動活性化への効果①当初6団体⇒26団体(協力、協賛含む)(2018年10月末日)②オープンホスピタルにメンバー団体が合同で参加(2018年11月3日)  ③メンバーの販売する冊子に他メンバーがカバーを制作販売へ④複数メンバーで他マルシェに参加⑤メンバーによる他公園でのマルシェ開催(2018年10月、11月、12月)⑥メンバー団体の開催するセミナーに他メンバーが参加⑦マルシェサミットの開催(2018年10月26日)⑧マルシェで子どもたちに主体的に読み聞かせを行う住民の登場⑨マルシェへの出展希望の問い合わせ⑩マルシェへの本の寄付⑪マルシェ後にメンバー団体への連絡や購入・制作依頼⑫まちかどライブラリーの市民館での開催依頼  ⑬公園へのライブラリー常設設置に向けた企画発足⑭まちかどライブラリーの全市版を実施(2019年3月予定)⑮市が開催するイベントへの参加協力依頼⑯小学校の夏祭りでのマルシェ出展依頼⑰区制作の各種チラシをマルシェで配布⑱宮前観光協会から広報誌記事執筆依頼⑲町内会のチラシをマルシェで配布⑳高齢者支援ボランティア団体からの連携依頼㉑老人会からの講演依頼㉒マルシェ当日、他団体による朝企画実施(2018年10月10日)  ㉓農家から農作物の寄付㉔農家からのマルシェでの農作物試食依頼㉕農協からのマルシェ開催場所提供申し出(農協駐車場)㉖近隣信用金庫からの協力申し出㉗区内病院からのオープンホスピタル出展依頼  ㉘地元紙「タウンニュース」への掲載複数回㉙町内会広報誌にまちかどマルシェの記事掲載(2018年7月号)㉚まちづくり協議会の広報誌への掲載(2018年9月号)㉛市長との車座集会での発表(2018年11月18日予定) ㉜東大全学ゼミ(奥村裕一教授)で事例報告(2018年10月26日)㉝全国マイクロライブラリーサミットでの事例発表(2018年5月13日)㉞「宮前メッセ」でまちかどマルシェの紹介(2018年3月10日)㉟宮前農フォーラムで発表(2018年3月11日)㊱横浜FM放送による実況中継(2017年10月11日)情報発信住民行政民間地域団体農家他主体・セクターとのつながり、連携まちかどマルシェへの参加団体数マルシェ参加団体間の新たな連携効果成果番号件数マルシェ以外の、新たな活動場所が提供されたケース②④⑤⑫⑬⑮⑯⑳㉑㉕㉗11件マルシェ以外の場での、販売等の場を得て、資金確保の機会を得たケース④⑤⑪㉑㉕5件住民の新たな参加の可能性が見えたケース⑧⑨⑩3件情報発信の機会が得られたケース②④⑤⑦⑫⑬⑭⑯㉕㉗㉘㉙㉚㉛㉜㉝㉞㉟18件参加団体間や他セクターとのつながり、連携、協働事業が新たに生まれたケース①②③④⑤⑥⑦⑩⑪⑫⑭⑯⑰⑱⑲⑳㉒㉓㉔㉕㉖㉗22件

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