2018実践研究報告集NO.1722
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表5-1コンセプト5.未来の有田のシナリオを表現するアートの制作5.1アーティストの選定有田はオランダ東インド会社との取引を始めた17世紀からオランダと深い関係にあり、現在は佐賀県とオランダ政府が協定を組んでクリエイティブ連携・交流を推進している。そこで、有田クリエイターズビレッジ会議のメンバーが所属している日蘭建築文化協会を介してオランダに縁のある2組のアーティストを招聘することにした。1組目ロク・ヤンセン氏日本在住のオランダ人画家。彼は建築を専攻していたバックグラウンドを持ち、レム・コールハース率いるOMAやファッションブランドのPRADAなどにおいてアートディレクターとして活躍している。専門的な調査に基づいてEUの歴史を大きなパノラマのコラージュとして表現したアート制作にかかわった実績があり、今回のプロジェクトで調査に基づいて表現する未来の都市風景の制作にふさわしい人物であるとしてヤンセン氏を招聘することにした。2組目遠藤暁子氏、ウコラ・ウンガー氏オランダに在住している2人のアーティストで、日本人振付師の遠藤暁子氏とドイツ人映像アーティストのニコラ・ウンガー氏。遠藤氏はダンスパフォーマンスの振付に日本で民俗学を専攻していたときの知識や経験を活かしているところが特徴的であり、ウンガー氏等とともにMERGEというプロジェクトを立ち上げ、市民活動として都市の様々な場所でダンスパフォーマンスを繰り広げる活動を行っている。今回のプロジェクトも市民活動として実施するものであり、また、民俗学的な手法を取り入れることによりまちづくりにおいて効果的なアート表現が可能である考えられることから、遠藤氏とウンガー氏を招聘することにした。5.2コンセプトおよび展示方法の検討3回にわたる江越邸滞在とワークショップを通じて、有田は「豊かな自然と伝統的町並みのなかにある革新的なまち」であり、これからは「生産地であることを生かした新しい観光・人材育成・ライフスタイル」を展開していくべきだということが、未来の有田のシナリオとして組み立てられた。また、「煙突を生かした未来的な景観」、「職人がものづくりに勤しむ様子が身近に感じられるまち」などの具体的な未来の風景についても検討された。主査の田口と委員の柄沢がコンセプトアドバイザーとなり、ワークショップで検討した未来の有田のシナリオに基づいて、有田の風土である「自然と人間」、「伝統と革新」の調和をコンセプトの核として抽出し、ロク・ヤンセン氏には襖絵により未来の都市風景、遠藤暁子氏とニコラ・ウンガー氏にはダンスパフォーマンス映像により未来の生活風景を、焼物や町並みなど有田固有の要素を用いて描いてもらうことにした(表5‐1)。展示方法は2つの作品を江越邸の6畳間にL字に並置することにした(図5‐1)。未来の有田に関する2つのアート作品を隣り合わせることにより、多義的な意味を生じさせ、シナリオの大筋を伝えつつも見た人が様々に解釈できることを意図した。スクリーンやプロジェクター設置棚の設置においては既存の建物を損傷しないように配慮して設計・施工した。図5-1江越邸のアートスペース5.2コンセプトおよび展示方法の検討3回にわたる江越邸滞在とワークショップを通じて、有田は「豊かな自然と伝統的町並みのなかにある革新的なまち」であり、これからは「生産地であることを生かした新しい観光・人材育成・ライフスタイル」を展開していくべきだということが、未来の有田のシナリオとして組み立てられた。また、「煙突を生かした未来的な景観」、「職人がものづくりに勤しむ様子が身近に感じられるまち」などの具体的な未来の風景についても検討された。主査の田口と委員の柄沢がコンセプトアドバイザーとなり、ワークショップで検討した未来の有田のシナリオに基づいて、有田の風土である「自然と人間」、「伝統と革新」の調和をコンセプトの核として抽出し、ロク・ヤンセン氏には襖絵により未来の都市風景、遠藤暁子氏とニコラ・ウンガー氏にはダンスパフォーマンス映像により未来の生活風景を、焼物や町並みなど有田固有の要素を用いて描いてもらうことにした(表5‐1)。展示方法は2つの作品を江越邸の6畳間にL字に並置することにした(図5‐1)。未来の有田に関する2つのアート作品を隣り合わせることにより、多義的な意味を生じさせ、シナリオの大筋を伝えつつも見た人が様々に解釈できることを意図した。スクリーンやプロジェクター設置棚の設置においては既存の建物を損傷しないように配慮して設計・施工した。図5-1江腰邸のアートスペース

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