2018実践研究報告集NO.1722
4/10

2.プロジェクト実施前の調査等2.1空き家所有者・地域の担い手へのインタビュー今後の文化芸術による空き家活用の課題と可能性を把握するために、まちづくり会社役員や地域おこし協力隊などのまちづくり関係者3 人、佐賀県や有田町に勤める公務員3 人、芸術家2 人、建築関係者3 人、空き家所有者・活用者5 人の合計16 人にインタビューを実施し、空き家を活用した文化芸術活動に対する具体的な意見を挙げてもらった(表2‐1)。空き家を活用してどのような文化芸術活動が可能か、空き家活用においてどのような関わり方が可能かを質問したところ、有田の文化や歴史を生かしたワークショップやアーティストレジデンス、地域住民や若者、外国人など、様々な人が交流する場が挙げられた。まちづくり関係者からはイベント主催やリノベーションなど、公務員からは公的立場からの支援や情報提供、芸術家からは芸術創作活動による参画、建築関係者からは空き家掃除や簡易な修理などハード面整備、空き家所有者・活用者からは空き家提供や外国人対応など、それぞれが今までの経験と異なる専門性を活かして文化芸術活動を実施したり、空き家の再生に関わったりできると考えていることがわかった。文化芸術活動を推進するにあたって今後の期待と課題を質問したところ、期待として地域の魅力向上、経済効果、人口の若返り、課題として新旧住民の相互理解や資金面の問題などが挙げられた。1.3本活動の目的本活動は、アムステルダムのDe Ceuvelを対象とする先行研究において得られた知見に基づいて、佐賀県とオランダ大使館が推進するクリエイティブ連携・交流とも協働しながら空き家を活用した文化芸術活動を実施するものであり、地域の担い手が未来の都市のシナリオを描き、それを高度な知識・技術をもつアーティストがアート作品により表現するというプロジェクトの実践を通じて、活動拠点とする空き家を戦略的な都市のシナリオに沿って活用していくための実践的知見を得ることを目的としている。同時に、地域住民のまちづくりにおける意識と行動の変化を促しつつ、クリエイティブコミュニティを形成することを目指す。表2-1インタビュー結果2.2関係団体との協議在日オランダ王国大使館、佐賀県肥前さが幕末維新博事務局の関係者、有田町のまちづくり課と必要に応じて協議を行った。在日オランダ王国大使館からは本プロジェクトにおけるオランダのアーティスト招聘に対して助成が得られることになった。佐賀県肥前さが幕末維新事務局との協議により、佐賀市中心市街地の水辺に整備されたオランダハウスでトークセッションを開催することになった。有田町のまちづくり課とは江越邸を今後どのように活用していくかを協議しており、整備方法や事業スキーム、運営主体について検討している。本活動は国内外のアーティストのレジデンス滞在やワークショップなど、従来の製造業の枠組みにとらわれない創造的な活動としてアート制作を地域の担い手とともに行い、空き家を提供する人、活用する人、コーディネートする人、リノベーションなどの費用面を支援する人を発掘し、有田に多く存在する産業の「遺産」を「資産」として活用していくエリアマネジメントの体制を構築することを狙いとしている。フランスの哲学者エリー・デューリングは未来の様々な可能性を示唆するアートをプロトタイプ文2)として提示するが、ここではプロトタイプとしてのアートの制作を通じたコミュニティ形成と空き家活用体制構築を目指す。

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る