2018実践研究報告集NO.1722
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東京都市⼤学⼩林茂雄ぼんぼり環境計画株式会社⾓舘政英本プロジェクトは、陶磁器生産地として困難な時期にある有田町の空き家活用方法を探るために、保存物件の空き家において地域の担い手がアーティストとともに文化芸術活動に取り組むものである。ワークショップの成果である「未来の有田」のシナリオをもとに2つのアート作品を制作し、それらを都市空間に埋め込むことにより、まちづくりにおける地域住民の議論を誘発し、公設民営による空き家活用の動きにつなげた。フランスの哲学者エリー・デューリングは未来の様々な可能性を示唆するアートを「プロトタイプ」として提示するが、ここではプロトタイプとしてのアートの制作を通じたコミュニティ形成と空き家活用体制構築が目指されている。クリエイティブコミュニティによる空き家活⽤体制の構築―「未来の有⽥」シナリオプロジェクト―東洋⼤学 准教授/⽥⼝ 陽⼦中川 ⼤起、クリンカス クン、柄沢 祐輔、後藤 隆太郎、三⽊ 悦⼦、清⽔ 耕⼀郎、⽥中 妙⼦1はじめに1.1活動の背景と目的・意義多くの近代建築史上価値のある住宅建築が失われている近年、これらの保存・継承に対する社会の関心は徐々に醸成されており、保存要望書の提出や、調査研究による歴史的価値評価等、多くの試みがなされてきてはいるが、抑止策として必ずしも有効とは言えない。仕様等が現行法規には不適合であったり、概して規模が大きく世代交代や家族構成の変化等で住宅として使用し続けるには不向きになっていたり、経年劣化が進んで大規模な修繕が必要な状態であったりして、住まい手にとって、その住宅建築自体を自分たちの手で保存継承することが困難になっているのは周知のとおりである。一方、第三者に委ねることを視野に入れた場合、いくら歴史的・文化的価値が評価されても、不動産マーケットではむしろ資産価値は低いため、さらに保存・継承を困難にしている。本委員会の構成委員は、神奈川県葉山町にある加地邸(昭和3年竣工・遠藤新設計)の保存・継承を2014年から「加地邸保存の会」として取り組んできた。その中で、特に制度上の課題に対する解決方法を検討する必要性に迫られた。本実践活動は、現行制度上の課題とその解決に向けての方向性を明らかにすることを目的として、写真1-1気仙沼鳥瞰写真写真1‐1 シンポジウム「加地邸をひらく:継承の実現へ」2015年11月28日(「加地邸保存の会」の活動)実践研究報告No.1722 類似の条件下の葉山町の近代別荘建築群を対象に行うこととした。 同様の近代建築史上価値のある住宅建築の資産価値を高める可能性を見出す意義があると考え、本実践活動に着手した。佐賀県有田の風景

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