2018実践研究報告集NO.1720
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現地での技術指導と試行(2017年12月〜2018年1月):足場設置後,三苫氏と上村淳氏(奥日田美建)より実地指導を受け,それをもとに試行錯誤で工事を行なったが、うまく施工することができなかった。そこで,2回目の指導では,具体的な改善点について助言をもらった。そして,その後には基本的な作業がある程度できるようになった。さらに3回目の指導では,凹凸を均す際のコツなどを教えてもらった。それによって仕上げの出来栄えが格段に向上した。採用した工法は大きくトラ葺き差し茅,差し杉皮,穴塞ぎの3種類である。トラ葺き差し茅:茅と杉皮の混ぜ葺きである「トラ葺き」を参考にして,杉皮葺きに茅を列状に差す工法を考案し,実際に試してみた。これにより,茅を充填して屋根厚を回復させるとともに,見栄えとしても疎らに茅が差されるのにくらべ有効である。その施工の手順を図3-10に示す。(1)茅の差し込みでは,作成したサジで杉皮を持ち上げ,押切で60cmにカットした茅を差し込む。その際,茅の根元を下に揃える。(2)叩き入れでは,作成したホメイタを用いて,差し込んだ茅を屋根の中のほうに叩き入れる。その際,角度を保つように茅を上から手で押さえながら叩く。(3)切り揃えでは,屋根表面にはみ出した茅を,ハサミを用いて切断し,屋根の面を揃えていく。(4)トラ柄の作成では,切り揃えた茅の上部の杉皮5cmr程度の間隔をあけて,(1)〜(3)の工程を繰り返すことにより,縞模様の屋根表面を作り出す。差し杉皮:屋根厚を回復させる工法として,差し杉皮を試みた。これは,茅屋根に差し茅をするように,杉皮葺きに杉皮を差し込む方法である。その施工手順を図3-11に示す。(1)杉皮の引き出しでは,サジを用いて凹んでいる箇所の杉皮を持ち上げ,サジの下の杉皮を引き出す。(2)杉皮の差し込みでは,引き出した杉皮の下に新しい杉皮(今回は中古)を差し込む。その際,杉皮が短くなっている部分に重点的に差し込む。(3)叩き揃えでは,ホメイタを用いて,差し込んだ杉皮と引き出した杉皮を一緒に叩き入れ,表面を揃えていく。この作業を,東側全体をみて凹んでいる箇所に施し,厚みを回復させるとともに,屋根面の凹凸をなくすようにした。穴塞ぎ:特に痛みが激しく穴が空いている箇所には,詰め物をして表面を塞ぐ施工を行なった(図3-12)。(1)ツメモノの設置では,穴が空いて露出したホコ竹の奥に,杉皮(劣化したもので構わない)を詰める。これは,仕上げとして並べる杉皮の勾配が緩まないようにするためである。(2)杉皮並べでは,下部から順に杉皮を並べる。その際,上下の隙間が重ならないように,互い違いに重ねていく。(3)ホメイタを用い,並べた杉皮を叩き揃える。この他,軒先や角の部分などの部分補修には茅を用いた。工事の竣工(2018年2月):ワークショップ後,補修工事を継続し,1月末をもって今回の補修工事は完了とした。さらに,2月初旬に足場を解体・撤去している(図3-13)。図3-9補修方法の検討図3-10トラ葺き差し茅の工程

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