2018実践研究報告集NO.1720
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東京都市⼤学⼩林茂雄ぼんぼり環境計画株式会社⾓舘政英福岡県うきは市新川田篭地区には茅葺き民家が数多く残っているが,それらの多くは持続の困難に直面している。そのような茅葺きの空家を使って,素人による茅屋根の補修を試みる活動を行なった。専門家に助言をもらいながら,茅葺きの道具づくり,茅材の調達,技術習得と実践,集落住民らとの茅葺きワークショップを実施し,その過程を記録することで,非専門家がどこまで茅葺き工事に参与できるのかを検証した。それによって,かなりの作業を担える可能性が確認できたが,同時に想定していなかった課題も見出された。今後は,地区内での茅場再生にも取り組み,地域循環的な営みとして茅葺きが行われることを目指し,活動を続ける予定。空家茅葺⺠家の地域資源化の向けたアクションリサーチ―新川⽥篭地区での「内ヶ原の家」プロジェクト―九州⼤学⼤学院教授/菊地成朋⽜島朗、天満類⼦、⾚⽥⼼太1.1活動の背景と目的・意義1.背景と目的本プロジェクトは,空家となった茅葺き民家を再生する試行を通じ,伝統民家の現代的な持続に向けた課題の抽出および地域居住者や技術者と研究者が連携した新たな体制の構築を目指すものである。茅葺き民家は,葺き替えという定期的な営みを前提とすることから,現代における持続には難しさがある。それらが立地する地域は過疎高齢化に直面している場合が多く,管理主体を失った空家が朽ちるのを待つような状況が見られる。福岡県うきは市「新川田篭地区」には茅葺き民家が数多く残っており,2012年に重要伝統的建造物写真1-1気仙沼鳥瞰写真写真1‐1 <内ヶ原の家>外観実践研究報告No.1720 群保存地区(以下,重伝建地区)に選定された。しかし、本プロジェクトの対象地となる内ヶ原集落(図1-1)は,新川田篭地区内にあって重伝建地区の線引きから外れた集落である。われわれは,2008,2009年にうきは市の依頼により重伝建の選定に向けての実地調査を担当したが注1)文1),内ヶ原集落とはその時からの交流が続いており,地域づくり活動への協力や過疎高齢化の進む集落の将来を検新川田篭地区福岡県うきは市内ヶ原分田重要伝統的建造物群保存地区うきは市図1‐1プロジェクト対象地区

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