2018実践研究報告集NO.1719
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東京都市⼤学⼩林茂雄ぼんぼり環境計画株式会社⾓舘政英宇城市⼩川町商店街には江⼾期末から明治・⼤正の⽴派な町家が残るが、2016年の熊本地震で被災した。これは⼩川町商店街という⼀地⽅都市の⼩さな町の熊本地震からの復興の記録である。震災後2年半が経過した今、公費解体された町家も多く空地が広がる中、地震から約1年後に、我が国で初めての取組である被災した未指定⽂化財への修復補助が決定し、⼩川町商店街の町家6軒が申請した。地震後の1年間は、各町家ごとの復旧⽀援が中⼼だったが、2年⽬の2017年6⽉に⼩川町商店街有志による苅萱の会が⽴ち上り、宇城市の職員も加わり共に将来のまちの在り⽅を考え、今何をすべきかを考え、まず動くことから始めた。現在も進⾏中である。熊本地震による伝統的町家の被災実態・復旧過程の記録とまちづくり―熊本県宇城市⼩川町商店街の歴史的町並みの継承をめざして―熊本⾼等専⾨学校客員教授/磯⽥節⼦坂⽥純⼀、柏原利武、冨⼠⽥シゲ⼦、平川晃、⾼⽊淳⼆、伊東⿓⼀、松下隆太1.実践活動の目的1.1小川町商店街とのこれまでの関わり磯田、坂田は2014年度に当該商店街に立地する新麹屋(明治16年)の登録文化財申請のための調査を行い、熊本高等専門学校学生の卒業研究の研究対象地としてこの小川町商店街に関わってきた。2016年4月14日、16日熊本地震が発生し、宇城市は震度6強を2度受けた。地震発生の1週間後、新麹屋の当主柏原さんから磯田へ町家の被災状況を見てほしいと連絡があり、4月26日に当該町家と小川町商店街の各町家の被災状況を外観目視で確認し、坂田は、地震発生の翌日4月17日に現地を見て回った。1.2実践活動の目的復興支援活動を地震直後から開始した。1年目の活動は3タイムラインで述べる。2年目となる本助成事業としての目的は①引き続き町家群の被災状況の調査②町家の保存・継承に向けた修復の支援(補助制度の活用等)③当該商店街将来ビジョンづくりの支援④地域のコミュニティ活動の支援であり、加えて⑤その活動を記録し、残すことも目的の一つとした。2018年6月に当該商店街の将来ビジョンを考えるために、苅萱(かるかや)会を立ち上げた。苅萱とは当該地域周辺の旧地名である。住総研助成申請時は専門家を呼んで講演会等をおこなう勉強会により町全体を地域の方々と考えることを計画していたが、地域住民自身で話し合う事がまず重要と考えた。苅萱会活動支援がメーンの活動となった。実践研究報告No.1719 2.熊本県宇城市小川町商店街について宇城市小川町は熊本県の中央部に位置する人口約13200人(宇城市HP平成22年)の小さな町である(図2-1)。小川町商店街は古くから地域経済の中心地の役割を担い、細川時代には薩摩街道の宿場町として栄えた。多くの伝承や史跡,寺社仏閣が存在する。かつては小川町商店街近くに海岸線があり、商人は砂川を使い天草、長崎等との交易も盛んであった。しかし八代平野の干拓により徐々に海岸線は小川町商店街から遠のき、現在はおよそ3km沖となる。また鉄道駅も商店街から離れて建設され、五木方面に抜ける県道がもう一本新たに建設されたこと、3号が当該商店街を外して建設されたこと、モータリゼーションの進展等により小川町商店街の衰退が始まる。近年はショッピングモール(イオンモール宇城)進出に伴う店舗の流出、空き家の増加等により、商店街一帯の人通りは減少し、過去の繁栄を思わせる賑わいはない。図2‐1小川町商店街の位置

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