2019実践研究報告集NO.1718
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①コミュニティ継承の意義仮設住宅で育んだコミュニティを災害公営住宅へ継承する意義については,仮設住宅からの⼊居者らが災害公営住宅での⾃治会形成を主導していったことで,⽐較的スムーズに組織形成が進み,住宅管理,コミュニティづくりの担い⼿になっていったことがあげられる。これは,3つの⾃治会役員の半数以上があすと⻑町仮設住宅からの⼊居者が占めていたことかすと⻑町仮設住宅からの⼊居者が占めていたことからも明らかである。その⼀⽅で,⼊居にあたって住⼾の位置が選択できなかったことから,仮設住宅での知⼈同⼠が階数もばらばらとなり,孤⽴防⽌という点では効果は限定的であった。そのため,隣同⼠を選択できるペア⼊居等の導⼊の必要性を感じた。②集会所を「みんなの居場所」とする条件あすと⻑町仮設住宅では,ほぼ毎⽇,様々な外部団体によって集会所でお茶会やイベントが開催されていた。その頃,各団体に活動状況の聞き取りを⾏ったところ,参加者が固定客化してつながりは広がらないという声が続いていた。⼀⽅で,参加者をみると,それぞれの活動で少しずつ顔ぶれに違いがみられていたある参加者は「この顔ぶれに違いがみられていた。ある参加者は「この⼈がいるお茶会には参加したいけど,あの⼈がいるのには・・・」とつぶやいた。要するに,⼈には相性があるため,活動(団体)を選んで参加しているということなのである。そうすることで,結果的に固定客化するのであるが,あすと⻑町の場合は,個々の活動は固定客化していても,多様な主体が活動していたため多様な相性が存在し,結果的に多様なつながりが⽣まれていたのである。そうだとすると,集会所の利⽤はできるだけ外部に開いて「つながりの多様性」を確保できるよう⼯夫していくことが肝要であり,これが集会所を「みんなの居場所」とする条件の⼀つといえよう。2.2 清⽔沢東住宅での取り組みと知⾒221災害公営住宅⼊居初動期のコミュニティ⽀援写真2-1 あすと長町での活動の様子170戸(入居開始年月)1号棟:6階建69戸・ペット可(2016.9)2号棟:6階建70戸(2016.9)3号棟:3階建31戸(20166)2.2.1 災害公営住宅⼊居初動期のコミュニティ⽀援清⽔沢東住宅(塩竈市)は2016年6⽉に⼊居が開始された3棟170⼾の災害公営住宅である。最寄駅よりバスで15分のところに⽴地することもあって,空き室50⼾が発⽣した。2017年10⽉からは⼀般公営世帯の⼊居が始まり,現在はほぼ満室となっている。⼊居開始当初から整備主体である都市再⽣機構がコミュニティ形成⽀援に取り組み,5ヶ⽉後には居住者3号棟:3階建31戸(2016.6)有志からなる世話⼈会が⽴ち上がっていた。しかし⾃治会結成への積極的な姿勢が⾒られないことから,筆者らに協⼒要請があり,2017年4⽉から同住宅にて⽀援を実施することになった。世話⼈会の構成は60代と30代の⼥性2名が中⼼となり,⽉1度の例会には15名程の居住者(多くは⼥性)が集まるが,毎回のように居住者間のトラブルや世話⼈会へのクレムがあげられ紛糾状態が続いたそこで⾃治クレームがあげられ,紛糾状態が続いた。そこで,⾃治会結成についての意向を推し量る全⼾アンケート調査の実施を筆者より提案し,まずは調査を実施することになった。2017年10⽉(⼊居1年4か⽉後)に実施たアンケート調査注3)の主な結果を⽰すと,世帯主の年齢は,「40歳代以下」が47.1%で,他地域の災害公営住宅と⽐較して若い世代が多いことが分かった。暮ら図2-2 清水沢東住宅の概要

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