2017実践研究報告集NO.1618
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4.4空きストックの活⽤に向けた社会実験A.社協会館のリノベーションによるセンターの開設①経緯対象とした⼩⾼社会福祉協議会会館(以下、社協会館)は、南相⾺市社会福祉協議会(以下、社協)の活動の場として計画され1982年に竣⼯したが各所に痛みが進み不B.東町ひだまり菜園①経緯まちなかの東町災害公営住宅の住⺠、担当課ヒアリングにより、「住⺠に農業経験者が多く、⼟いじりへのニーズが⾼いこと」、「仮設住宅に居住していた際に共同菜園を⾏っていたが、距離が遠く⻑続きしなかったこと」「公営住宅内に⼟じりを想定したスペスを設して計画され、1982年に竣⼯したが各所に痛みが進み不特定多数が利⽤できない状態だった。耐震調査を⾏い、耐震性は問題ないことも明らかになっていた。震災後は、南相⾺市ボランティア活動センターとして利⽤されていたが、ボランティアセンターは2015年4⽉1⽇に同区内の他物件に移動し、その後は空いていた。⼀⽅、2016年に⼊って、センターの活動が認知され、常設の場所を探し始めた。市⺠が存在を認知しやすく、アと」、「公営住宅内に⼟いじりを想定したスペースを設計したものの、使われていないこと」が明らかとなった。そのため、まちなか部会にて、公営住宅内の未利⽤スペースを活⽤して住⺠と共同菜園をつくる提案を⾏った。部会での賛同を受け、2017年1⽉から活動を開始した。②実施体制運営に当たっては、災害公営住宅の住⺠及び本組織のスタッフに加えて、千葉県柏市にて空地を活⽤した地域クセスしやすく、安価で借⽤でき、ある程度の広さがあるところが望ましいと考えていた。社協としても、⼩⾼区⺠の思いが詰まった社協会館を保存活⽤したい強い意向があり、2016年4⽉より、無償にて貸与いただいた。②実施体制丹⽻由佳理⽒(森記念財団都市整備研究所)の協⼒で間取りの設計を⾏った。費⽤抑制のため、東京⼤学の学⽣とセンタ常勤職員らが⾃ら施⼯した施設の備品は南相スタッフに加えて、千葉県柏市にて空地を活⽤した地域の庭「カシニワ」のマネジメントを⾏うNPO法⼈Balloon(代表:鈴⽊亮平⽒)と、地域福祉を専⾨とする福島県⽴医科⼤学:末永カツ⼦教授ら、放射線量の計測には放射能測定センター南相⾺とどけ⿃の協⼒を得た。③活動内容2017年1⽉から⽉1回程度,全員で活動し、毎回活動内容をまとめた「はたけ通信」を作成し、公営住宅に全⼾配布した放射線量事前計測を⾏周辺住⺠や移住センター常勤職員らが⾃ら施⼯した。施設の備品は、南相⾺市の予算や地元住⺠からの寄付によって設置した。③活動内容床のリノリウム板を外してカーペットを敷き詰め、壁の汚れを取って⽩ペンキですべて塗り直した。徹底的な清掃作業も⾏った。センターでは、来訪者を迎え⼊れる機能、⼩⾼で何が起こっているのかをお伝えするミュージアム機能、⼩⾼復興への思いや⽇常の問題を話し合うサロン機能、配布した。放射線量の事前計測を⾏い、周辺住⺠や移住者、⾼校⽣などを招いて収穫祭を実施した。④実験の成果災害公営住宅の公共⽤地ではあるものの誰も使えない場所が畑にできたことで、⼟をいじることを当然の⽣活をしてきた⽅にとって貴重な時間を過ごせる場が⽣じた。そうした時間を個⼈単位のみならず、団地住⺠全員に声かけして⼀緒に作業する時間や収穫を楽しむ場を仕掛け会議機能を担うこととした。④実験の成果住宅総合研究財団の資⾦援助により、リノベーションに必要な最初の⼈材と資材が確保できた。そうした⽀援があったので、建物所有者である社協に利⽤意向をぶつけられた。現在もセンターとして運営している。光熱費などは市が提供している。社協会館に対して⼩⾼区⺠の中には思い出を持つ⽅もかけして緒に作業する時間や収穫を楽しむ場を仕掛けたことで団地全体のコモンズになったといえる。最近は、センターの声かけ無しでも住⺠の皆さんで草刈りや連れ⽴っての外出や他の未利⽤地の畑化など、⾃発的な動きが⽣じている。社協会館に対して、⼩⾼区⺠の中には思い出を持つ⽅もおり、解体されずに活⽤が継続していることには重⼤な意義があると考える。図3 センターの利⽤レイアウト図4 ひだまり農園作業後の集合写真C. まちの⼯房開設に向けたワークショップの開催①経緯「単⾝で移住したため空き室が存在すること」、「同移住者がエンジニアであること」、「中⼼市街地に⼯業系の専⾨学校があること」から、空き室を使って、地域住⺠や外部⽀援者に開かれたものづくりの場「まちの⼯房」を作る構想が練られた。移住者と運営会議を⾏い、「避難指⽰解除後の建て替わりを反映したまちなかの地図を作成し、その地図を基に3Dプリンターで新しいまちの模型をつくるワークショップ」を⾏うことになった。センター及び同移住者の⾃宅を会場とした。住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 27

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