2017実践研究報告集NO.1618
4/10

3活動の主体3.1組織の概要本活動は、⼩⾼復興デザインセンター(以下、センター)の⼀活動として実施した。センターは、南相⾺市と東京⼤学の委託契約によって、南相⾺市⼩⾼区の復興に向けた協働の場として、2016年7⽉16⽇に開設された。現在は、3名の常勤職員(うち2名は市職員、1名は東京⼤学研究員)と、東京⼤学の研究者及び学⽣を中⼼とした外部からの⽀援者によっ(2)本活動への⽰唆⼟地所有者と使い⼿のマッチングによって空き地の利⽤を促進し緑を保全・創出する仕組みや、魅⼒的な個⼈の庭を地域の資源として外に開いていく仕組みが、空き地の荒廃化の問題を抱える⼩⾼に対して⽰唆的である。(3)本活動との差異約42万⼈の⼈⼝規模を誇る柏市と2,000⼈ほどしか帰還者のな⼩⾼は空き地を貸した⼟地所有者及び利⽤⼤学の研究者及び学⽣を中⼼とした外部からの⽀援者によって運営されている。3.2設⽴の経緯センター設⽴の背景に、2014年に発⾜した「⼩⾼区地域構想ワーキンググループ(以下、WG)」があった。WGでは、復興にあたって住⺠協働体制構築のため、地域住⺠、南相⾺市、東京⼤学の参画のもと、⼩⾼の復興ビジョンのいない⼩⾼では、空き地を貸したい⼟地所有者及び、利⽤を望む個⼈・市⺠団体の総数に⼤きな差異がある。空き地を使いこなす担い⼿が限られる状況での地域の緑の保全・創出が、本活動の⽬指すところである。「⼩⾼地域構想」の策定に向けた協議がなされた。2015年度には、地域構想の先駆けとして⼩⾼駅前を中⼼とする中⼼市街地を対象にして「まちなかプラン」を策定し、本プランの中でセンターが提案されて実現した。本プランは、計10回の住⺠ワークショップ及び座談会による検討を経て、南相⾺市へと提出された。33業務内容写真1-3 「その他条例」研究会(2016年9月17日)3.3業務内容センターは、復興に向けて「探究」と「実践」の2つが重要だと考えている。「探究」では、⼩⾼が直⾯している未曾有の原発津波複合被災において、様々な知⾒を結集し、課題を発⾒し、解決の⽅向を探ることを指す。「実践」では、探究の中で得られた解決の⽅向に対して実際2.2わいわいコンテナ(1)概要佐賀市中⼼市街地の空地に、中古貨物コンテナを加⼯した構造物(雑誌図書館、交流スペース、チャレンジショップ)、にものごとを動かしていくことを指す。具体的には、次項で述べる空きストックの利活⽤に加え、まちなかプランに基づく公園の改修、まち歩きによる歴史的建造物の価値発掘、⾼校⽣によるまちづくり活動の⽀援、地域福祉の専⾨家と連携したサロンの運営、集落部の⼟地利⽤計画の策定⽀援など、同区が直⾯する課題の解決に向けた多様な取り組みを⾏っている。構造物(雑誌図書館、交流スペス、チャレンジショップ)、芝⽣広場、ウッドデッキを配することで、中⼼市街地の来街者の増加、利⽤者の交流促進と街なかの回遊性の創出を促す2011年から続くプロジェクトである。(2)本活動への⽰唆県外の所有者から低未利⽤地を低価格で借りているが、コンテナであるため原形復旧が容易である。周囲の建物と異なり外から活動が⾒えるように設計しており、単発の⼤きなイベントよりも⽇常的なワクシプを多く実施するようベントよりも、⽇常的なワークショップを多く実施するようにしている。周囲では新規出店やリノベーションなどが起こっている。(3)本活動との差異本活動が、⺠間主体の空きストックの利⽤⽅法を探求したのに対し、わいわいコンテナプロジェクトは市の⾏政計画中で位置づけられた社会実験である。運営は地元の特定NPO法⼈が担うが、2016年時点では、市が年1,200万円程度出資し、4本活動の内容4.1活動のフレーム本活動は、センターによる「不動産ストックに関する現況調査」と、住⺠や南相⾺市との協働の場である「まちなか部会」での協議、そうした協議やセンターへの依頼を踏まえた「社会実験」という3つの活動から成る⼈が担うが、2016年時点では、市が年1,200万円程度出資し、借地、コンテナのリース代、⼈件費(2名常駐)、管理費(電気代等)を賄っている。まえた「社会実験」という3つの活動から成る。活動の基本的な流れは、「不動産ストックに関する現況調査」によって把握された課題を「まちなか部会」で協議し、「社会実験」として実践する、というものであるが、協議の内容や社会実験の進度に合わせて、順序を柔軟に⼊れ替えながら実施した。4.2不動産ストックに関する現況調査4.2不動産ストックに関する現況調査(1)まちなかにおける建築実態調査全般的な傾向は、集落部よりもまちなかの⽅が帰還者の割合も絶対数も多い。集落部は、海際だと津波浸⽔によって災害危険区域の指定があり、⼭際だと放射能汚染度が他と⽐べて⾼い傾向にある。本論⽂では、集落部の住⺠にとっても⾃分のまちとして認識でき、多様な活動を⽀えてきたまちなかを主要な対象とする。そこで常磐線⼩⾼駅の住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 24

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る