2017実践研究報告集NO.1617
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法第20条は、「景観計画区域内の建造物の所有者は、当該建造物について、良好な景観の形成に重要であって前条第⼀項の国⼟交通省令で定める基準に該当するものであると認めるときは、国⼟交通省令で定めるところにより、景観⾏政団体の⻑に対し、景観重要建造物として指定するこ4葉⼭町における「その他条例」案4.1はじめに葉⼭町は、別荘建築群にその特徴が⾒いだされる。その保存活⽤を図るにあたっては、町が⼀定のイニシアティブをもて対応できることが望ましため町指定⽂化財⼜とを提案することができる。」として、景観重要建造物の指定の提案を定めており、所有者がイニシアティブをもって景観重要建造物にすることが出来る仕組みとなっている。4.3景観計画の概要葉⼭町は、平成22年6⽉に町内全域を対象とした「葉⼭町景観計画」を策定・告⽰している。葉⼭町景観計画の第4節では「景観重要建造物及び景観重要樹⽊の指定のをもって対応できることが望ましいため、町指定⽂化財⼜は景観重要建造物の指定によることが考えられる。もっとも、町指定⽂化財の場合、町の財政上の負担が発⽣すること等から、⾃ずと対象とできる物件が限られてくる。そのため、こうした負担のない景観重要建造物制度の活⽤が望ましいであろう。そこで、以下では景観条例の改正によるその他条例の制定について検討する。第4節では、「景観重要建造物及び景観重要樹⽊の指定の⽅針」が定められている、具体的には、「1地域の⾃然、歴史、⽂化等からみて、建造物の外観⼜は樹容が景観上の特徴を有し、景観計画区域内の良好な景観の形成に重要なものであること」、「2 道路その他の公共の場所から公衆によって容易に望⾒されるものであること」、「3 所有者の同意⼜は合意があること」、「4 建造物(建造物と⼀体となって良好な景観を形成している⼟地その他の物件を4.2葉⼭町景観法施⾏条例の概要葉⼭町は、平成23年2⽉に「葉⼭町景観法施⾏条例」を定めている。これは施⾏条例との名称が付されているとおり、平成16年に制定された景観法の施⾏に関し必要な事項を定めるものである(条例第1条)。条例における定義も「法の例による」としている(条例第2条)。また、景観重要建造物の指定等についても、「町⻑は、法第19条第1項の規定により景観重要建造物を指定したときはその旨を含む。以下同じ。)については、建造物の所有者が公共財(※)として認め、町⺠誰もの使⽤を妨げないものであること」である。(※)公共財:公園・⼀般道路など排除可能性と競合性のいずれもない財をいう。このうち特徴的なのは上記4である。景観重要建造物に指定するには、「公共財」(公園・⼀般道路など排除可能性と競合性のいずれもない財をいう)でなくてはならずの規定により景観重要建造物を指定したときは、その旨を告⽰するとともに、規則で定めるところにより、これを表⽰する標識を設置するものとする。」としているのみであり、景観重要建造物の指定の要件は全て法の定めによることになる。法第19条第1項は、景観重要建造物の指定について、「景観⾏政団体の⻑は、景観計画に定められた景観重要建性と競合性のいずれもない財をいう)でなくてはならず、町⺠が誰でも使⽤できるようにしなければならないと定められている。このような要件が付される場合、私的な利⽤等が主として想定される別荘建築群を景観重要建築物に指定するのは困難となるだろう。上記4については、景観計画の変更⼿続きが必要となる。4.4その他条例案の検討「景観⾏政団体の⻑は、景観計画に定められた景観重要建造物の指定の⽅針・・・に即し、景観計画区域内の良好な景観の形成に重要な建造物(これと⼀体となって良好な景観を形成している⼟地その他の物件を含む。以下この節において同じ。)で国⼟交通省令で定める基準に該当するものを、景観重要建造物として指定することができる。」としている(第1項)。国⼟交通省令で定める基準とは、景観法施⾏規則第6条の景観重要建造物の指定の基準のことである葉⼭町は特定⾏政庁ではないことから、その他条例案を検討するにあたっては、特定⾏政庁である神奈川県との協議が必要にある。そこで、同じく特定⾏政庁でない箱根町のケースを参照すると、神奈川県との協議においては、県との役割分担が主として問題になったようである。具体的には、神奈川県では、A.神奈川県建築審査会による同意とB.特定⾏政庁である神奈川県による指定という2つの⾏為を⾏うことになるがいずれも建築物の安全性等の審査をある。具体的には、「地域の⾃然、歴史、⽂化等からみて、建造物(これと⼀体となって良好な景観を形成している⼟地その他の物件を含む。以下同じ。)の外観が景観上の特徴を有し、景観計画区域内の良好な景観の形成に重要なものであること。」(施⾏規則第1号)、「次のいずれかに該当するものであること。イ道路その他の公共の場所から公を⾏うことになるが、いずれも建築物の安全性等の審査を主として⾏うものであり、⽂化財としての価値の有無や現状変更規制の内容及び範囲等について判断を⾏うものではない以上、当該判断については箱根町においてする仕組みが求められたようである。そのため、葉⼭町の場合には、景観財としての価値の有無や現状変更規制の内容及び範囲等について判断を⾏う仕組みを設ける必要が出てくる。以下では、箱根町のその他条例である「箱根町⽂化財保護条するものであること。イ道路その他の公共の場所から公衆によって容易に望⾒されるものであること。ロ政府が世界遺産委員会(世界の⽂化遺産及び⾃然遺産の保護に関する条約第⼋条1の世界遺産委員会をいう。以下このロにおいて同じ。)に対し同条約第⼗⼀条2の世界遺産⼀覧表に記載することを推薦したものであって、当該推薦の際に世界遺産委員会に提出された管理計画(変更があったときは、その変更後のもの)に従って公衆によって望⾒されるものあると」(施⾏規則第2号)とう基準が定めら例の⼀部を改正する条例の制定について」を参照しつつ、対象を主として景観重要建造物とすることに伴って必要となる修正をする形でその他条例案を提⽰する。ものであること。」(施⾏規則第2号)という基準が定められている。国宝・重要⽂化財などは景観重要建造物に指定できないが(法第19条第3項)、登録有形⽂化財についてはそのような制限はなく、景観重要建造物に指定することができる。住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 18

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