2017実践研究報告集NO.1616
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4.4104号室レンタル利⽤者の定着104号室においては,レンタル利⽤者が定着し始めた。マルシェイベントの開催や,ボディケアのイベント,会議など多様な⽤途に利⽤されている。例えば,これまでは主査や委員が中⼼となって開催していたマルシェイベントであるが,利⽤者が104号室に限って,近しいイベントを主催しており,地域の住⺠を巻き込むきっかけとなっているに関わることは⾯倒である。と⾔った認識から,いずれも良い反応は得られなかった。また,アンケート調査を依頼するにあたっても,物件所有者は許可を出すものの,不動産仲介業者でストップがかかることが幾度となくあった。理由は以下のとおりである。築古物件は⼊居時期やリフォームの度合いによって賃料巻き込むきっかけとなっている。運営者がイベント主催者にならずともイベントが開催されことは,持続性の点から⾒ても良い傾向にあるといえる。築古物件は⼊居時期やリフォームの度合いによって賃料に⼤きな差がある。その為,住⼈同⼠がコミュニケーションを取って,賃料の差が明らかになると,仲介業者へのクレームになる。⻄I棟では,コミュニティの価値で不動産価値を向上させる前提に⽴っているが,不動産仲介業者がそれを嫌がっていることがわかる。図4-4 レンタル利⽤者によるマルシェイベント45視察・⾒学の増加②地域コミュニティ調査の不⾜地域コミュニティの形成調査が不⼗分であった。104号室の運営が地域への影響を持ったのは確かであるが,それらを適切に評価できていない。どのようにエリアを切り取って調査をすすめるかに,今後の課題が残った。6今後の展望4.5視察・⾒学の増加多数のメディアに取り上げられるなど,社会的な注⽬が集まったことも⼿伝って,視察数が増加した。⽬⽴った視察者を記すと,URリンケージ都市再⽣本部や,⼤阪ガス都市開発株式会社など,⼤量のストックを所有し,その活⽤の検討をすすめている団体がめだった。また,蓑原敬先⽣にも訪問頂き,農住都市構想の着想期の⽇本の都市計画の動きなどを丁寧に教えていただいた。6.今後の展望今後の展望として,残っているコーポラスはりま16棟のネットワーク再構築を狙っている。いずれの建物も⻄I棟と同様に個⼈所有となっている。多くの場合が,不動産仲介業者に運営を任せきっており,従来通りの経営⽅法である。今回の実践によって,コミュニティの価値による⼊居率改善が実証されたため,この成果をもとに,別棟所有者へのアプローチを進める。それによって,現いずれの視察に関しても,⻄I棟がどのような仕組みで運営されているか,これらの活動にはどのようなキャラクターが必要か。に話が終始することとなった。4.6イベント運営のノウハウ蓄積(広報など)104号室の運営や,住⼈を巻き込んだイベントの開催よって,居住エリアに隣接するシェアスペースでの適切な運営ノウハウが蓄積された在の点的な状態から⾯でのコミュニティづくりへと展開させ,ストック活⽤からのまちづくりとして発展することを狙っている。同時に,今後⼤量に増える同様の個⼈所有物件の活⽤についても実践事例として,知⾒をためる。な運営ノウハウが蓄積された。特筆すべき点は,団地住⼈の巻き込み⽅と地域住⺠への広報のかけ⽅である。例えば,餅つき⼤会のような団地住⼈が中⼼となるイベントは出来る限り,直接声掛け,⼿描きの案内をつかう(図3-3)。⼀⽅,地域に広く発信したい場合は,イベントフライヤーを⼤量に刷り,SNSで拡散させる。イベントの狙いや,ターゲットによって広報ツールを変えることが⾮常に効果的にはたらく。い<研究主査>・佐伯亮太⼤阪⼤学⼤学院博⼠課程後期<研究委員>・藤⽥武彦コーポラスはりま⻄Ⅰ棟所有者家族ずれの場合においても,まずは団地住⼈に知らせることで,「何をやっているかわからない。」「変な⼈が来たら嫌だ」といった不安感がなくなるように伝えることが⾮常に⼤切である。5.実践活動の反省51活動の反省点コポラスはりま⻄Ⅰ棟所有者家族・笹倉みなみ㈱フロッグハウス建築⼠・中村義弘中村義⼀建材株式会社代表取締役*当実践研究報告集普及版は『住総研研究論⽂集・実践研究報告集』No.44の抜粋版です。5.1活動の反省点①⽔平展開(他の棟に同じ仕組みを拡げる)の難しさ⻄I棟での実践はあくまで1棟での事例である。コーポラスはりま全体での取り組みとするためには,他棟へ⽔平展開することが必要である。そのため,物件所有者や不動産仲介業者へ協働のアプローチを試みた。しかしながら,住宅以外への投資の理解のなさ,コミュニティ住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 9

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